Sさんの帝王切開

Sさんは、自宅出産希望でゆいクリニックから依頼を受けてサポートすることになった。

Sさんはもともと、仕事もフィットネスインストラクターをしており、身体を作っている方だった。初めてのお産で、自宅で水中出産希望だった。

予定日より4日前、真夜中に破水感、5時頃から陣痛が始まったという連絡を受け、私はSさんの自宅に向かった。

5分毎に陣痛が来ており、サポート助産師も呼んで見守っていた。破水をしているので、あまり長引くようだと自宅でのお産は厳しくなることがある、無事に産まれてきてくれることを願いながら、時々ママや赤ちゃんの様子を観察してその時を待っていた。

お昼過ぎ、陣痛はくるが今ひとつ赤ちゃんが下に降りてきていないような感じがする、内診をすると4センチ。まだまだ時間がかかりそうだが、破水をしているため自宅でこのままサポートするのは安全ではないと判断し、ママを説得してゆいクリニックに移動した。

クリニックに到着後、エコー診察してもらうと赤ちゃんの向き(回旋)が逆になっていて、上向きになっているということが分かった。なので通常よりも時間がかかる、今日はこのまま様子をみて、明日には促進剤も使ってお産が進むようにサポートしましょうということになった。

翌日、朝から点滴による促進剤を使用。痛みに耐えるママ。献身的にサポートするパパ。見守り、声をかけ、時に背中をさすったりしながらなんとかお産が進んでくれることを願った。夕方、促進剤は一旦終了(夜は危険なため通常使用しない)明日再度仕切り直しの方針。進まないお産に涙するママ。ママをサポートしながらも一緒に辛そうなパパ。

私はまた翌日くるね、とクリニックをあとにして自宅に戻った。もしかしたら帝王切開になるかもしれない、そうなったらママは受け入れられるだろうか。もともと自宅出産を夢みていたママが、予想外の方向に進んでいて絶望感でいっぱいなのではないか。でもとにかく、無事に、赤ちゃんがでてきてくれると信じて、次の日のサポートをしようと考えていた。

翌朝、スタッフから本人が帝王切開に承諾したと連絡をもらった。理由は促進剤を使っても全くすすんでいないこと、これ以上時間がかかると赤ちゃんが危険になる可能性があるから。帝王切開サポートのためにすぐにクリニックに向かった。

ママもパパもなんとも言えない表情で、というよりはもう疲れ切っていて、それでもなんとかお産をやりきるため帝王切開を受ける準備をしていた。

一緒に手術に立ち会い、手術がはじまった。

赤ちゃんが無事に出てきてくれた。ほどなくしてママの胸にのせた。二人とも安堵の表情で、赤ちゃんをかわいいかわいいと嬉しそうに声をかけていた。

手術も無事に終了し、入院部屋へ移動。とにかくゆっくり休んでと声をかけSさんのお産は終了した。

Sさんのお産は、どうすればよかったのか、妊娠中のかかわりの中で何があったらよかったのか、だいぶ私の中に引きずっていた。お産ブログは記憶が鮮明なうちに書くようにしているが、お産から2か月以上書けないでいた。

でも、今、時間が経って思うこと、それは私とSさんの関係がまだ深くなかったんだなということ。

妊娠中、健診でお会いするたび、少しずつ人となりが分かっていき、関係性が深まっていくが、Sさんとは表面上は関係を構築していたと思うが、根っこのところで繋がっていなかった。なんでもざっくばらんに話せたり、弱音を吐いたり、そういうことができるまでにはなっていなかったと。

私も自分をだせていなかったんだろう、だからSさんも出していないんだろう。

それでもSさんのお産のサポートをさせていただけたことはとても光栄で、次の子でも経腟分娩トライはしたいと言っているSさんが、願いを叶えることを私も願っています。

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