Jさんは、ゆいクリニックからの委託の自宅出産依頼という形で知り合い、まずは自宅出産の相談を受けた。
Jさんは1経産婦さんで、前回のお産の経過を聞いたり、自宅出産について具体的に話をしたりして、フィーリング的にも合うし、自宅出産サポートの依頼を承諾した。
クリニックでの健診と自宅健診を行っていき、互いを少しずつ知っていく。希望している水中出産の物品について、お産の際の緊急時のシチュエーションなども話し合いながら準備を進めていった。
Jさんは30週まで骨盤位(逆子)で、骨盤位のままだと自宅出産はできないことを伝え、逆子体操をアドバイスし、33週の時には頭位(通常の赤ちゃんの胎位)になっていて、ほっとした。
36週からは1回/週の自宅健診だが、私が夏休みをとっていたために健診に行けず、その時はサポートの助産師にお願いして健診を行ってもらい、情報を共有していった。
上の子のお産が予定日を超えていたこともあり、8月末の予定日ではあるが、9月に入るのではと予想していたものの、8月の最終週からはご主人さんも育休に入られていてお産するためのエクササイズも積極的にされていた。
予定日3日前の朝、陣痛がきていると連絡を受け、すぐに自宅に向かった。まだ不規則な感じで、私たちが到着すると陣痛も遠のいてしまった。これはまだお産にはならないなと思い、私はその日クリニックに仕事の日だったので、遅れて仕事に行った。その日の夕方、ちょうど仕事が終わったころに、また陣痛が強くなってきたと連絡が入り、Jさんの元へ向かう。
5分間隔できており、発作時はやや険しい表情をしている。いよいよだなと思い、希望していた水中出産の準備をご主人さんに進めてもらう。アプリで陣痛間隔を測ったりしていてまだ冷静なJさん。陣痛の合間には会話もふつうにできる。だけど少しずつ、表情が険しくなっていく。プールのお湯の準備ができると、「プールに入る」と言って入ってみる。「腰をおして」とご主人と私で時々交代しながら腰をマッサージする。お湯がぬるくなってくると、サポートメンバーが熱いお湯を入れながら、ぬるいお湯をバケツリレーで抜いてくれる。
そしてだんだんと強くなってきて、会話できなくなってきた。でもいきみ感がでてこないなと思い、内診をしようかなと相談していたらぐっといきみ感がでてきた。おしりへの圧迫が強くなり、前かがみの体勢だったのが、自ら座る姿勢にかわった。そして数回の陣痛でゆっくり赤ちゃんの頭が見え始め、頭がおまたにはまり、そしてでてきた。次の陣痛で身体もでてきて、Jさんの胸元へ抱き上げてお産となった。
赤ちゃんは産声をあげ、元気な様子で一安心。
次は赤ちゃんに栄養をあげていた胎盤がでる番。水の中で出血がはじまり、すぐにみんなで引き揚げて横のマットレスに寝かせる。出血が多い印象で、すぐに止血剤の点滴を開始。ほどなくして胎盤も無事にでてきた。本人の状態と出血量を確認していく。気分不良もなく、赤ちゃんに授乳もしようとしていて落ち着いている。赤ちゃんははじめ穏やかだった呼吸が少し速くなり、そこも観察を続けていった。出産後約3時間、時々二人を観察しながら、プールやそのほか不要な道具を片付けていく。
なんとか二人とも落ち着いてきたので一旦帰宅(自宅についたのが夜中1時前くらい)念のため翌朝に訪問し、その日の夕方にも訪問。病院へ移動する必要があるかどうか、対策して改善するのかどうか、Jさんと状況を相談しながらの産後でした。2日目まで心配だった症状も落ち着き、私はやっと本当に安堵できました。
そして産後5日間の訪問も終わり、二人も経過よくきていたので大丈夫だろうと安心していたら、数日後にJさんから胃痛があると連絡が入りました。病院受診を促し受診して診てもらいました。だけど胃薬の処方で少しましになった程度とのこと。Jさんはその後、心臓や肺にも異常がないかを診てもらうために救急センターに行って原因検索してもらうと、特に身体に異常はないと。
後日、医師からディーマー(Dysphoric Milk Ejection Reflex)(乳汁射出反射による一時的な不快感や抑うつ感が生じる現象)だろうと診断されたとのこと。つまり、授乳に伴うオキシトシンなどのホルモン変化による不調。メンタル面だけでなく、身体的にも不調をきたすのだなと思いました。
Jさんの産後のサポート、今後も続いていくので、できることをしていこうと思っています。
Jさんのお産が、今後の育児の糧となりますように。
今回のお産は、出血や赤ちゃんの様子など、いろいろと心配な点がたくさんで、私も反省や学びの多いお産サポートでした。状況の見極め、その後予測がどれだけできて予防できるか、自宅だからこその対策など、まだまだ自分も成長していかねばと改めて思いました。今後もJさんを見守りながらできるサポートを模索しながら、寄り添っていきたいと思います。